八田真太郎作品展「Daily」


3月1日から被災地支援の一環として作品展を行ないます。

震災直後の被災地の非日常的な被害の様子を見て、いつも あたりまえのように出会っている日常の風景がとても儚く大切なものだと感じるようになりました。今回展示している小品ではそのような日常風景を描いています。

展示した作品の売り上げを活動資金として今年の夏に、宮城県女川町で子供向けワークショップを実施する予定です。まだ未熟な作品ではありますが、ご協力いただければ幸いです。


2013年3月1日(金)-15日(金)

場所/喫茶店&ギャラリー茶色の小びん
  川口市飯塚2-4-1 tel.048-252-0500
  定休日/日曜・月曜・祝日 営業時間AM11:00-PM7:00

上) ミメーシス/行為の堆積・情報の抽出/The shade of tree
   18×31cm パネルにアクリル
下) ミメーシス/行為の堆積・情報の抽出/The two fishermen
   12×26.5cm パネルにアクリル


作品展「Daily」企画趣旨

私は2011年3月末に支援ボランティアとして被災地に行き、そのあと「アーティストとして何ができるかよりも被災地の人達のために何ができるか」を考えて2011年8月と2012年3月に、「東日本大震災チャリティー展 in 川口」をおこないました。その際多くのアーティストに参加していただき、作品の売り上げを仙台を拠点として物資の配給や炊き出しを行っていた「NPO法人・ワンファミリー仙台」に義援金として寄付することができました。

昨年の7月に再び被災地に行き現地で見聞したところ、津波が来た沿岸部ではガレキの撤去などは終わり、ほとんど更地となった場所に残ったいくつか空家が建っているような状態になっていて、被災した人はそこから離れた高台の仮設住宅に住んでいました。仮設住宅に住んでいる被災者に対しては行政によって一時給付金の配布がおこなわれていて、今のところ生活に支障がないとのことでした。
ただその一方で、港の再建や被災した場所の再開発については、根本的な津波対策がないにもかかわらず、時間ばかりがかかる復興計画が提示されています。そしてそういった将来への明確な展望がないことが、基幹産業だった漁業や水産加工業をしてきた被災者の就労意欲の妨げになっていると被災地で聞きました。

そういった現状を考えて今後は義援金や支援物資を送ることより、被災地の人達が自分達で住んでいる地域を、もう一度作リ直すための活動に対して支援する方が良いと考えました。また今の被災地では震災直後と違って物質的なことよりも精神的なフォローを必要としていると感じました。
被災地に行った際、幾人かの支援活動をしている人と会いましたが、その中で宮城県女川町で支援活動をしている梶原千恵さんと会いました。梶原さんは、現在の女川の町は津波によってイメージが悪くなってしまい、住んでいる人達も自分の町に対して自信をなくしてしまったので、美しい自然や独自の文化といった女川の良さに、住んでいる人と外から訪れた人両方に気づいてもらうための活動をしたいと言っていました。
梶原さんは被災した人達と一緒に町を元気にするための活動として今年の夏に女川町でアートフェスを予定されています。そこで私はそのアートフェスと関わった形で子供を対象としたワークショップを夏に女川町で行いたいと考えています。


「二つの存在と時間」(制作途中) 
160×160cm(完成時は160×480cm)パネルにアクリル

制作途中ではありますが、震災直後の被災地を描いた作品も展示します。震災の被害の様子は多くの記録写真集などにより見ることが出来ますが、私としては自分自身が実際の現場で感じた、とても現実とは思えないような被害状況を、観る人にすこしでも実感してもらえればと思い制作しています。
作品の「二つの存在と時間」という題名は、ひとつは描かれたイメージとしての2011年3月時点での被災地の存在と時間であり、もうひとつはイメージが描かれた作品の物体としての存在と、作品が完成するまでにかかる時間のことを意味しています。絵画とはつねに2つの対象を認識することを要求する矛盾した存在です。
人間は根源的に時間的存在でありますが、私たちが宇宙的規模で見ればとても短い限られた時間枠の中でしか生きていけないという制約の中で、どうすればその生に輝きを与えることができるのか、それは個々の人間の価値観によって変わってくることではありますが、私としては現実経験と自己表現の両方に関わることによって自分という存在の痕跡を残したいと考えています。